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鼻血ダラダラとまらない~正しい止血法を伝授~

コラム著者:瀬田宏哉
救急科専門医
脳外科や救急科、小児科、心療内科などを学びつつ
家庭医療の勉強をするために給田ファミリークリニックに勤めています

救急医療にたずさわっていると、鼻血が止まらず救急車で運ばれるひとにしばしば遭遇します。しかし、なかなか鼻血を対応してくれる医師(主に耳鼻科医)が見つからず、遠くまで搬送されてしまうことも少なくありません。(病院到着時には止血されていることも多いのですが・・・)

さてこれはなぜでしょう?

簡単なお話です。

「正しい止血方法が浸透していないから」

さぁ、今日から実践できる正しい鼻血の対処法を学んでみましょう!周りの人にもぜひシェアしてくださいね。

①出血部位と正しい止血法

よく昔から「鼻血ぶー」なんて言いますが、実際は「鼻血ダラダラ」そんなイメージですね。痛みを対して感じる訳でもないのにやたらと出血の量が多いので、たかが鼻血と思いつつもなかなか止まらないと不安になるものです。

鼻血が出た!
そんな時みなさんはどこを押さえていますか?

鼻の付け根を押さえたり、首をトントンしたりしていませんか。
正解は「鼻翼」と呼ばれる鼻の横の膨らみ(いわゆる小鼻)です。ここの内側の鼻中隔に「キーセルバッハ部位」と呼ばれる出血しやすい部位があり、鼻血の約95%はここから出血しています。奥から出ているようで、実はけっこう手前なんですね。

②止血の際の注意点

押さえる場所は分かりました。
ここで大事なのは、「体勢」、そして「時間」です。

鼻血の時は上を向く、というイメージがありますがこれは間違いです。出血が喉を通って気道や食道へ流れ込み、気持ち悪くなって嘔吐したり、誤嚥の原因となります。必ず座って顔は前屈みとし、口からでる血は飲み込まずに吐き出して下さい。

そして押さえる時間の目安は約20分程度。注意点は20分間の間に止まっているか確認のため圧迫を中断してしまうことです。辛抱強く圧迫を続けて下さい。この20分法を正しく2回実施しても止まらない時は、病院受診が望ましいでしょう。

③どんな時に病院に行けばいい?

上記の通り2回の実施で止血しないとき、これは前述の95%の出血源であるキーゼルバッハ部位以外の出血点、つまり5%の場合で、専門的な止血が必要になることがあります。

他にも、歯肉や手足の皮下血腫(アザ)など鼻血以外の出血がある場合には、白血病や凝固異常疾患の存在、抗血小板薬や抗凝固薬などのいわゆる血液サラサラ薬の内服の影響を考える必要があります。

出血がうまく止まらずに1~2時間が経過すると、たかが鼻血でも貧血が進行することがあるため、顔色が悪い、ふらふらする、息が苦しい、胸が痛い、などの症状を伴う際には止血していても必ず病院を受診しましょう。

④どうやったら予防できる?迷信は真実?

一番の原因はやはり「外傷」つまり鼻いじりや鼻かみでしょう。単純に子どもの癖であったり、鼻炎で頻繁に鼻をいじっていたり、また冬場の乾燥する時期は粘膜の乾燥で出血が出やすくなるため、部屋の乾燥等には気をつけましょう。

また、血圧上昇との直接的な関係性はありません。理論的には血圧とは動脈の圧で、鼻血の出血は静脈ですから、鼻血が出ているときに血圧が高いのは、不快感や驚きから来ている可能性が高いわけです。

チョコレートやピーナッツ、そしてよく漫画で描かれる性的興奮にともなう、いわゆる「鼻血ぶー」はもちろん迷信であり、鼻血との因果関係はありません。(チョコレートやストレスは特定の病気とは関連していることがあります)

さて、今日はみなさん一度は経験したことのある鼻血についてお話ししました。もう自信を持って対処ができそうでしょうか?ここまで学んだことを実践してみて、それでも心配があればどうぞ迷わず受診して下さいね。

文字よりも、顔をみてじっくり話す方がこういうことは伝わるものです。それではクリニックでお待ちしています!

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