家庭医が教える病気の話

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漢方とは

コラム著者 コアラ先生
家庭医療専門医。
給田ファミリークリニック医師。

「漢方」と聞いて、浮かぶイメージはどんなものでしょうか。中国から伝わった医学、あまり即効性はない(すぐには効かない?)値段が高い…などなど、外来でも患者さんから質問をよく受けます。今回、これらの質問に答える形で、われわれ家庭医が漢方を使用する意義について述べてみたいと思います。

①漢方とは

まず漢方とはどんなものであるかを簡単に述べてみたいと思います。
日本では、どの科の医師でも、保険適用の漢方薬を処方することができます。その中で、家庭医が処方する漢方薬としては、漢方が第一選択となるような、「冷え症」「冷えにより増悪する痛み」「こむら返り」「喉の詰まった感覚」などが挙げられます。
これらの症状は、西洋医学的に診察や検査で異常がないかを調べることはできても、西洋医学の治療薬に関しては、確立されたものはまだありません。

漢方は、その起源は中国ですが、その後、日本独自の発展を遂げ、現在約140種類の処方が保険適用で処方できます。粉薬で当初は飲みにくいことがありますが(一部錠剤もあり)慣れて飲めさえすれば、値段は高くなく、副作用も多くはないのが特徴です。

また、風邪の漢方薬は、どんな症状でも基本的には一剤で対応可能で、そのほか「認知症の興奮」「便秘」「めまい」なども、西洋薬ですと、薬をいくつか組み合わせて飲む必要が出てくる一方、漢方薬はまずは一剤でいろいろな症状を治せる薬を探します(場合により2剤までは組み合わせることがあります)。

②漢方の効果、副作用、値段について

漢方の効果については、即効性よりはゆっくり効いてくるイメージを持たれていることもありますが、風邪やこむら返り、便秘など、即効性のある処方では、内服して数時間(速ければ数分)〜数日以内には効果を自覚できることもあります。体質を改善する目的で処方する薬の場合には、2週間〜4週間内服して、効果を実感していく処方もあります。

漢方の副作用は、全くないわけではなく、漢方薬を構成している生薬ごとの副作用や、生薬へのアレルギーは起こり得ます。しかし、西洋薬の副作用と比べてもその頻度は多くなく、内服を中止すれば副作用は改善することが多いです。

西洋医学以外の補完代替医療は、漢方をはじめ、サプリメント、鍼灸、海外からの輸入されたものなどがありますが、その中で漢方は保険適用であることが特徴です。治療継続には値段も重要な点ですが、保険適用の漢方薬は、一月で平均1000〜2000円ほど(3割負担)です。

今回紹介した漢方につきまして、ご関心ありましたら、当院でぜひご相談ください。

お医者さんの上手なかかりかた〜「かぜひいた」〜

コラム著者 密山 要用
ニックネームは「よーよー」
家庭医療専門医。
給田ファミリークリニック医師。

給田ファミリークリニック
住所|東京都世田谷区給田3-26-6

HP|https://www.kyuden-clinic.com/
問い合わせ  03-5315-5511

「かぜひいた」

そろそろ、まわりでゴホゴホ、コンコン、ジュルジュルという音が聞こえる季節になりました。
「あ、かぜひいたかも。」
そんなとき皆さん、どうしていますか?

医者に行く、市販のお薬を使う、スポーツドリンクをたくさん飲む、とにかく寝る、はちみつや生姜などを使ったドリンクを作って飲む、気合いではたらく、などなど。
今までのご自分や家族の経験から自分なりのかぜの治し方があると思います。

でも、
そもそも「かぜ」ってなんでしょうか。

お医者さんの「かぜ」と患者さんの「かぜ」は、実はお互いが別のものを想像していることがあります。そして、お医者さんが考える「役割」と患者さんの「期待」が違っていることも実はよくあります。診察室では、お互いに気づかずに微妙にすれ違っている、なんてことも多いんです。


(とあるクリニックの風景)

ここでは、
  • ①「かぜ」でのお医者さんの役割
  • ②「かぜ」って何ですか?
  • ③お医者さんの限界(イイワケ!?)
  • ④「かぜは出会いの場」

の4つにわけて書いてみます。

お医者さんの頭の中(医師アタマ!?)を知ることで、皆さん自身が「かぜひいた」ときにお医者さんを上手に活用できて、この冬を乗り切れるとよいなぁと思います。
もちろん、かぜをひかないのが一番ですけれど。

①「かぜ」でのお医者さんの役割

「かぜひきました。」こんな風な訴えで、診療所の外来に来られる方が多いです。
そんな場面での、ぼくたちお医者さんの大事な役割は、極端に言うと
「かぜではない病気を見つけること。」なんです。

拍子抜けしたかもしれませんが、事実そうなんです。
「典型的なかぜ」は薬で治りません。放っておいても、自然に治ります。
ですので、お医者さんは「かぜ」のパターンをいくつにも頭の中で分類して、かぜではない危険な病気が隠れていないか注意したり、抗生物質などの特別な治療が必要かどうかについて考えることを大切にしています。

「かぜを治してほしくて来たのに、かぜじゃないから大丈夫って言われてもなぁ。」
そう思う方もいるかもしれません。お医者さんが考える「役割」と、患者さんの「期待」が違っているというケースですね。

ですので、もう一つお医者さんにとって大事な仕事は、コミュニケーションだと思います。

つまり、かぜで診療所に来る理由はひとそれぞれなので、わざわざ診療所に今日来た理由や期待していることを聞いて、それに応えようとすることだと思います。
ぼくたち家庭医は、とくにそのことを意識して、診療をしています。

「明日、抜けられない大事な用事があるので、少しでも症状をよくしたい。」「インフルエンザだったら会社を休まないといけないので診てほしい。」「熱がとにかくつらいので、落ち着かせたい。」などなど。

黙っていては伝わりません。患者さんとしては「かぜひいたので来ました。(あとはわかってくれるだろう)」ではなく、もし特別理由があるなら、「こういう理由で/こういうことを期待して 今日は診療所に来たんです。」とお医者さん(あるいは受付の方や看護師さん)に伝えるようにすると、ミスコミュニケーションが減るかもしれません。
ぜひ、ぼくたちに「今日来た理由」を聞かせてください。

②「かぜ」って何ですか?

そもそも、「かぜ」ってなんでしょう。
患者さんが「かぜひいた」というときの症状は実に様々です。

そんな中で、お医者さんの考える「典型的なかぜ」=「ふつうのかぜ」とは、「せき、はな、のどの症状が 急に ほぼ同時に 同じ程度ででてくる ウイルス性の感染症」です。<図参照>

この時、お医者さんは、「ふつうのかぜ」と考えます。そして、ちょっとホッとします。
そのほとんどが自然によくなるからです。もちろん、お薬を飲まなくても、です。
「ふつうのかぜ」は、ウイルス性の感染症なので、(ざっくり言うとウイルスより大型で別物の)細菌をねらった抗生物質もまず必要ないと考えます。

そして、「ふつうのかぜ」を「治す」薬はありません。
ただ辛い症状を少しでもやわらげるために、
そしてわざわざ診療所に来てくれた患者さんの理由や期待に応えるために、
その方にオーダーメイドの治療を考えて、
風邪薬を出したり、薬を出さずに安心できる説明を処方している、というわけです。

ただ、かぜについてのこういった説明を省いている、ということはよくあります。
ですので、「ふつうのかぜ」と自分で判断できる場合には、診療所の薬に頼らず、セルフケアでよくなるのを待つもの一つのやり方だと思います。

ただし、症状が「ふつうのかぜ」とは違ったパターンのときにこそ、お医者さんの出番です。
せき型、はな型、のど型の 「症状が偏ったかぜ」の時にはそれぞれ注意点がありますし、
いわゆる せき、はな、のど症状が目立たないものは、もはや「かぜ」ではない病気として、より緊張して、慎重に診療します。溶連菌感染症や肺炎などには、抗生物質を処方します。

それは、高熱だけ、微熱がずっと続く、フシブシイタイ(関節痛)、ブツブツ(皮疹)、熱と下痢、熱とひどい頭痛 といった症状(「なんだかいつものかぜと違う!」)の場合には、まさにお医者さんの出番だといえるでしょう。

③お医者さんの限界(イイワケ!?)

こんな風にして、かぜを診ているぼくたちお医者さんですが、やっぱり限界があります。
ここではちょっとイイワケさせてください。イイワケなんて読みたくないという方、まぁそういわず、意外とココが「かぜ」の勘所だったりするので最後まで読んでください。

はじめは「ふつうのかぜ」だと思っていても、数日後に症状が変化してくることがやはりあります。つまり「ふつうじゃないかぜ」ということ。

診察の終わり際に、
こんなことを言われたことはありませんか?

「高熱が3日以上つづいたら来てくださいねー」
 (肺炎などの細菌性感染症を考えるので)

「いったんよくなったのにまた悪化したら来てくださいねー」
 (副鼻腔炎や肺炎を考えるので)

「咳だけ長引くことが時々あります。つらければまた来てくださいねー」
 (感染後咳嗽や気管支炎、肺炎などを考えるので)

ぼく自身もよく言います。「ふつうのかぜ」は治る期間はまちまちですが、症状のピークは2、3日であとはだんだん良くなっていきます。そうではない経過の時には、それまでセルフケアで診ていた人も、「ふつうじゃないかぜ」ではないか、「かぜではない病気」ではないか、お医者さんに相談することをおすすめします。

もちろん「かぜにならないように早めに来ました。」というかかり方もありだと思います。
ゾクゾクした寒気、だるさといった「かぜかな!?」という引きはじめには、葛根湯などの漢方薬をつかって、はやめに直そう、というのもお医者さんの使い方のひとつだと思います。

④かぜは出会いの場

ぼくの家庭医療の師匠は、
「かぜは出会いの場」とよくおっしゃっていました。

お医者さんからみると、
かぜでの受診をきっかけに、普段は診療所にかからないけれどもリスクを抱えている人に出会うことがある、という意味です。隠れた高血圧や、未成年の喫煙、認知症のはじまりなどに気づくことがあります。

一方で、患者さんからみると、かぜでの受診をきっかけにあなたにとっての地元の「いい先生」に出会えるかもしれません。いよいよ辛いという症状になる前に、なんでも相談できるかかりつけ医をみつけておくのは、健やかに暮らすための豊かさのひとつかもしれません。

お気に入りの美容院、美容師さんを探すように、お気に入りの診療所、お医者さんを探してみてください。

みなさんにとっての、なんでも相談できるかかりつけ医となれるように、
給田ファミリークリニックでは、所長の池亀を中心に、複数の家庭医、総合診療医がワークシェアしながらはたらいています。よければ、一度おこしください。

まとめ

これまでのことをまとめると、
  • ・お医者さんの「かぜ」と 患者さんの「かぜ」は違うかもしれない。
  • ・お医者さんの考える「ふつうのかぜ」はせき、はな、のどの症状が 急に ほぼ同時に 同じ程度ででてくる ウイルス性の感染症
  • ・「かぜひいた」における お医者さんの仕事は、「かぜじゃない病気をみつける」ことと、患者さんとのコミュニケーション
  • 「ふつうのかぜ」は自然になおる。つらい症状を抑えるために、セルフケアをしたり、薬を飲んだりする。抗生物質は必要ない。診療所に必ずしも受診しなくてもよい。
  • ・せき、はな、のどの症状が偏ったかぜ、あるいは症状が目立たないもの(もはやかぜではない)の場合には、お医者さんに相談しましょう。
  • ・お医者さんの限界もある。ふつうのかぜが、ふつうじゃない経過をたどる場合には、お医者さんに相談しましょう。
  • ・かぜは出会いの場。

まだまだ「かぜ」は奥が深いのですが、今回はこのへんで。

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